外国人雇用の正解|不法就労は、「政策違反」へのペナルティ
不法就労の被害者は、誰?
不法就労には実は被害者がいない。
えー!!じゃあ不法就労やってもええやん!
とか、聞こえそうだけど、決してそういうわけじゃないのでちゃんと読んでね。
冷静に考えると、不法就労における登場人物って
・労働者たる外国人本人
・雇用主たる会社
になります。
外国人本人からすると、たくさん就労してその対価を得ることができるので、要は「稼ぐことができる」。
会社からすると、人手不足を補うことができるので、「労働力を確保できる」。
おやおや、これはまさにWIN-WINですなあ。
・・・ということで、誰も困る人がいないので不法就労って結構軽い感覚で(罪の意識なく)割とみんなやっちゃいます。
特に、「本人が稼ぎたいって言ってるから良くないですか?」っていう会社さん多いです。
え、それ責任転嫁してません!?
本人が稼ぎたいといえば、週28時間しか働けない留学生を40時間働かせていいんですか?
本人が稼ぎたいといえば、法的に働くことができない人を働かせていいんですか?
そんなに稼がせたいなら時給単価を最低賃金にせず、しっかり評価制度入れて高時給で雇用してくださいよ。
そんなに働かせたいなら、ルールを守ったうえで働かせてくださいよ。
申し訳ないですが、こういう感覚の企業は今すぐ、日本経済から退場してください。
これは、「人材監理の正解」っぽい話になってしまいますが、
合法的に稼がせてあげることが社長の責任だと思います。
どうして社会のルールを守れないのに平然と社会に居続けられると思っているのでしょうか?
POINT①不法就労には、被害者がいないため、意外と軽い感覚で犯してしまう人が多い。
POINT②合法的に社員を稼がせることは社長の責任。
なんで不法就労はいけないの?
不法だからに決まってるだろぉ!!
って言いたいけど、ちゃんと解説しますね。
そもそもどういうものが「不法就労」なのか?
就労の制限を超えて就労した場合が不法就労の代表格ですね。
例えば、就労できる在留資格ではあるが、その在留資格で就労できる業務の範囲を超えた場合。
他には、資格外活動許可で認められた時間を超えて就労した場合。
などがよく見る例ですね。
では、どうして就労の制限があるのでしょうか?
それは「在留資格だから」としか言いようがありません。
解説をします。とっても難しい話であり、外国人雇用をするなら絶対に知っておかないといけない話が、
今から始まろうとしています。心して読んでくださいね。
POINT①業務の範囲や就労できる時間を超えて就労した場合が不法就労の代表格。
POINT②就労制限は、在留資格であるがゆえに発生する。
在留資格とは?
外国人が、日本で行うことができる「活動内容」の限定列挙が、在留資格
大切なことなので100回くらい寝る前に唱えてください。
「活動内容の限定列挙」です。
グローバル化が進む中、日本も外国人を受け入れていかなければならない。
しかし、無制限に受け入れることは当然、治安の問題等からできない。
外国人からしても、「何をすれば日本に行けるのかわからない」という状態は好ましくない。
そこで、日本に来てくれたら嬉しい人を明記しようということになりました。
それだけでは、どういう人が日本に来てれたら嬉しい人かわからないので、
「こういう活動をする外国人には(日本に来てくれて嬉しい人、として)在留資格を付与することで滞在を許可しましょう」ということで、在留資格ごとに活動内容を入管法(別表1および別表2)に明示することにしました。
よって、在留資格は、外国人が日本で行える活動の限定列挙であるということができます。
在留資格で定められた活動に当てはまっているか否かのことを「在留資格該当性」がある、または、ない、という風に言います。
POINT①在留資格は、外国人が日本で行うことができる活動の限定列挙。
POINT②在留資格の活動に当てはまっていることを「在留資格該当性がある」という。
在留資格該当性は、どの時点で満たせばいいのか?
もちろん、在留資格の許可申請のときには満たしている(あるいは満たす予定であること)を立証しなければなりません。
では、在留資格が許可されたあとは、満たしていなくもいいのでしょうか?
そんなわけねえだろぉ!!
・・・はい。そうですね。
在留資格が許可されたあとも、在留資格該当性は満たされていなければなりません。
つまり、在留資格の許可を受けたことにより、外国人は、在留資格該当性を満たし続ける義務が発生するわけですね。
じゃあ、在留資格該当性を満たし続けていれば、ほかは何やってもいいの?
そんなわけねえだろぉ!!
・・・はい。そうですね。
そうなんです。外国人は、「在留資格該当性を満たし続けなければいけない義務」とともに、「在留資格の活動範囲を超える活動をしない義務」も発生するのです。
この活動範囲を超える活動っていのは、収入を得る活動を指します。
息するなとか、買い物するなとか、寝るなとかそんな話ではありません。
この、「在留資格の活動範囲を超える活動」が要は、先ほど紹介した不法就労のよくある例なわけです。
POINT①「在留資格に該当する義務」と「活動の範囲を超えない義務」は常にクリアしている必要がある。
POINT②在留資格の活動の範囲を超える収入を得る活動が「不法就労」である。
やっと。なぜ不法就労がいけないのかにクローズアップ。
復習です。在留資格において定められた活動は「日本に来てくれて嬉しい人」でした。
どういう人が日本に来てくれて嬉しいかは、時代や経済情勢・政治情勢等によっても変わります。
たとえば、「人手不足を補う外国人(特定技能)」は、不景気が続く日本にとっては日本人の就職の機会を奪うおそれがあるため、数年前までは「タブー」でした。
しかし、社会情勢が変わり、そもそも働き手が人口減少で減っているので「人手不足を補う外国人(特定技能)」は「日本にとって来てくれて嬉しい人」になりました。
これは、法改正により在留資格の種類が増えた例です。
在留資格該当性(入管法別表1,2)において規定される活動は、あまりにも狭くしすぎると、柔軟性がなくなるのである程度の抽象性を持って規定されています。
この抽象的な部分のYESかNOかの線を広げたり狭めたりすることができる仕組みがあります。
それが「上陸基準省令」と言われるものです。
例えば、いままで「技術人文知識国際業務」の在留資格で入国を認めていた人であっても、経済情勢などによって、今までよりも、狭い範囲で「技術人文知識国際業務」の許可をしなければいけなくなったときに、省令でその範囲を変更することで現代に即した人だけを受け入れよう!というのが、「上陸基準省令」になります。
結局何が言いたいかと言うと、
在留資格は、「日本にとって嬉しい人の活動内容(在留資格該当性)」であり、「経済情勢等に合わせてアジャストされたもの(上陸基準省令)」であります。
その範囲を超えて活動を行うということは、この、日本が必要だから行っている経済上・外交上・政治上など様々な政策を台無しにする行為なんですね。
つまり国策への反逆。
ということで、制裁しましょうというのが不法就労なんです。
ああ、長かった。
POINT①「上陸基準省令」で政策的に在留資格の活動範囲を調整している。
POINT②調整された活動範囲を超えることは政策違反となるので不法就労になる。
結局言いたいことは、「その活動範囲を越えたか否かの見極めが難しい」ということ
抽象的かつ難しい記載の活動範囲の白黒を素人が判断できるのか?
できませんっ!!
この判断を素人が行うと、在留資格が許可されないどころか、不法就労を知らず知らずに行ってしまいます。
在留資格が許可されなければまだ幸せかもしれません。不法就労の水際で阻止されたのだから。
かならず、外国人雇用をしている会社は、これを判断してくれる専門家に常に相談できる状況しておいてください。
これが、外国人雇用をする前提条件です。
絶対守ること:いつでも相談できる専門家を確保してから、外国人を雇用すること。
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