製造業分野の特定技能外国人のキャリアアップ

製造業/特定技能/1号/2号/永住者/キャリアアップ/昇給/対策

目次

1.キャリアアップ=在留資格のステップアップ を理解する。

 新制度と呼ばれている、育成就労制度(2027年4月1日施行決定)ではとくに外国人の「キャリアパス」を重要視しています。制度上のみならず昨今の労使関係においては日本人も含めて労働者(及び会社)の「成長」をどう実現するのかが極めて重要な課題となっております。

 しかし、外国人には、日本人とは異なり、本人にどれだけ意欲や能力があったとしても在留資格が伴わなければキャリアアップしていくことは不可能となっております。【育成就労(現行:技能実習);3年→特定技能1号;5年→特定技能2号;上限無し→永住者】といったイメージです。

(育成就労から特定技能までは、在留資格が求める技能レベルと実際の技能レベルが連動します。永住者は外国人の最終目標みたいなイメージとなります。)

 特定技能1号になることは比較的難易度は高くないですが、特定技能2号になることが会社で長く働くためにはマストであり、永住者になるためにも特定技能2号になることがマストとなります。よって、特定技能2号になるための環境整備及び永住者になるための環境整備が外国人のキャリアアップ(ひいては企業の成長)に重要であることとなります。

①特定技能2号への移行対策
②永住者になるためのキャリアパスの整備
が特定技能外国人に長く働いてもらうためには極めて重要である。

2.特定技能2号になるために

 主に課題となるのは①技能試験②日本語試験③実務経験となります。

①技能試験について

 特定技能2号試験に加えビジネスキャリア検定3級への合格が必要です。特定技能2号試験は、合格率は25%程度で推移しているようで、かなり難易度は高いです。ビジネスキャリア検定も管理者的知識も求められるので、体系的に教育をしないと外国人任せで合格を期待するのは少々厳しいところがあるかと存じます。したがって、会社内で試験合格対策を実施することが重要であります。

②日本語試験について

 現行制度では、特定技能2号になるにあたり、日本語能力要件は有りませんが、育成就労制度施行後は、N3の合格が必要となります。また、先述の技能試験に合格するためにもN2に近いくらいの日本語能力がないと合格のハードルも高くなります。したがって継続的な日本語の教育と日本人と会話する機会を増やすことが非常に重要となります。積極的に日本人と会話する子は上達する傾向にありますので、採用においても留意すると合格率を挙げられるかもしれません。

 なお、統計の数字が公表されているわけではないのですが、日本語能力が高いほど失踪率が低いと一般的に考えられていますので失踪対策としても意義があるかと存じます。

③実務経験について

 3年以上の実務経験が必要。他分野からの転籍等の場合、特定技能1号の5年の期間内では満たなさいこともあるので注意が必要です。採用の際にスクリーニングできるようにしておく必要があります。

①特定技能2号移行試験対策は本人任せでは難しいので会社主導で行う必要がある
②日本語の上達も重要であるため特に日本人と会話する機会や日本語に触れる機会を意図的に創出する必要がある

3.永住者になるために

 主に課題となるのは①社会保険や税金の納付状況②独立生計能力③その他国益要件などとなります。

①社会保険や税金の納付状況について

 社会保険の納付(支払い遅延がないことも含む)が求められます。会社の社会保険に加入していれば基本的には心配はないと思いますが、脱退一時金の還付請求を繰り返していた場合、社会保険の納付がないことと評価される恐れがあるので少なくとも特定技能2号になったあとは、還付請求をしないことが重要となります。

 税金も同様で、母国への家族への送金により扶養控除の申告をし、税額が少ないあるいは非課税である場合には永住は許可されえませんので、注意が必要です。また何らかの理由で住民税の特別徴収から外れた場合(普通徴収となった場合)、支払い遅延となっていて永住不許可になっている例も多いので指導が必要です。特に出産等の関係で収入がなくなっているときにこういう事態が起きていることが多いです。

 いずれにせよ企業側でこのような事情を把握して外国人に指導していく姿勢が重要になります。

②独立生計能力について

 永住を許可されるためには独立生計能力(要は収入金額の要件)が必要です。サラリーマンの場合、これが理由で永住申請を諦めることとなるケースが一番多いと感じています。あくまでも目安的な金額になりますが、一般的には、一人世帯の場合、残業代を含めず(賞与は含めてOK)に、年収300万円、家族がひとり増えるにつき約80万円加算した金額がこの要件クリアに必要な収入となります。もちろん居住地やその時の社会情勢等にもより変動することもありえます。

 就労系の在留資格者の場合、5年分の収入を遡って確認されるので最短で永住者となるためには特定技能2号になった時点では要件クリアした収入である必要があることとなります。つまり、特定技能1号の間にいかに昇給したのかが重要であることとなります。

 また、外国人が転籍する主な理由は人間関係悪化または昇給しないことの2つに起因していることが多いです。したがって昇給すること自体が外国人の成長意欲を高め定着にもつながるし、永住者となるためにも重要な位置づけであることになります。

 やはりわかりやすいのは、〇〇ができるようになったら〇〇円昇給するというように、どうなったらいくらになるかが明確である評価を外国人は好む傾向にあるようです。先程の独立生計をクリアできる金額を特定技能1号終了時の目安として毎年の、あるいは、〇〇ができるようになったらの、昇給率を組んでみてはいかがでしょうか?

①税金や社会保険に関して十分な注意が必要
②公平な評価による昇給で十分な収入を確保できるキャリアモデルの形成が重要

4.さいごに

 外国人の「在留」と「成長」に正面から向き合うことは、他の企業では取り組み例は少なく(専門的でもありますから)、継続して取り組んでいけば、自社の社員の定着のみならず外国人に選ばれる企業としての地位も獲得できるものであると思います。

 1〜3のことを考慮の上支援施策を行うことは御社において極めて重要な課題であると考えます。

外国人の「在留資格」と「キャリア・成長」は、自動車の両輪です。どちらかだけでは成立しないです。
しかし非常に専門的なので、専門家によるアドバイスを受けながら「会社主導で」行うことが外国人の定着やキャリアアップには極めて重要である。

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この記事を書いた人

MIYOSHI ATSUSHIのアバター MIYOSHI ATSUSHI 代表社員

名古屋の行政書士。就労に関する在留資格の専門。特に、技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能などの就労系の在留資格が得意。名古屋では最大規模の実績。
外国人雇用の正解×人材監理の正解を提案することで、”世界中のあらゆる人の成長を加速させる”ことが理念。
自身の経験から生まれた理論で御社の採用・教育・定着・キャリア・成長にコミットします。

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